調査研究事業

2008年度第二回財団法人NEC C&C財団シンポジウム報告
「地域の安心・安全のための情報化のあり方」

会場風景
    会場風景

去る2009年2月16日、「地域の安心・安全のための情報化のあり方」と題して、2008年度第二回NEC C&C財団シンポジウムが開催されました。財団法人社会経済生産性本部情報化推進国民会議、電子社会イノベージョン推進コンソーシアム、国際大学GLOCOM、国際社会経済研究所の後援のもと、泉ガーデンコンファレンスセンター会場に約70名の参加を頂きました。

昨年はセミナーという形で、わが国の住基ネット・住基カードなどに見られる公的個人認証や電子申請が普及していない現状に焦点を当て、住民データベースのあり方や、国民IDのあり方について、海外事例を参考に議論させて頂きました。今回は、システムを利用する側に立った視点を加えたシンポジウムといたしました。

田中義高氏
  田中義高氏

後閑専務理事による挨拶の後、田中義高 厚生労働省社会保障カード推進室室長補佐による基調講演「社会保障カード(仮称)の検討状況」ではじまりました。年金記録問題に端を発し、2011年の導入を目途にスタートした社会保障カード(仮称)ですが、一昨年の2007年9月に、「社会保障カードの在り方に関する検討会」が厚生労働省に設置され、総務省などと連携した具体的な検討が開始されています。昨年2008年3月のNEC C&C財団セミナーでの海外事例報告は、そのような動きの中にあってタイムリーな内容であったものと思います。今回の田中氏の講演は、活用できるものは、どんどん取り入れ、精力的に検討している状況が伝わってきました。

次世代電子行政サービス、電子私書箱、住民基本台帳カード、公的個人認証、地域情報プラットフォーム構想、レセプトオンライン化などのキーワードは、まだ一般的には普及していませんが、これらの紹介は、現場での活用を踏まえた実務的なシステムにしようという意気込みが感じられるものでした。

事例報告「欧州における国民IDと社会保障カード」では、昨年の追跡調査としてオーストリア、ドイツ、また今年あらたにフランスを加えた3つの海外事例の紹介がありました。昨年の調査を統括すると、(1)基本となる番号から、ソースPINが生成され、それを元に用途に応じた個別データベース上での個人認識番号を発行することで、個人情報を紐付けされないようにする仕組み(セクトラルモデル)、(2)個人情報を誰かが閲覧すると必ず記録が残り、個人がそれをチェックできる仕組み、(3)個人情報保護の監視ができる法的な仕組み、の3つが大きなものだったと思います。詳しくは昨年のセミナーの海外事例報告を参照頂ければ幸甚です。

遊間和子氏
  遊間和子氏

今年のオーストリアに関する遊間和子氏の調査報告では、「オーストリアは、行政機関による個人情報の取扱いについて日本同様センシティブでありながらも、取り組みの動きが非常に速く、既にカードの普及に向けた活発な動きになっている。ポータルサイトhelp.gv.atなどは、郵便番号の入力などで個人の目的に応じた地域情報を迅速に活用できる仕組み。個人認証カードと自治体サービスなどとの連携も進んできている。これに対し、日本は住基ネットや住基カードへの嫌悪感が先にたち、未だちゃんとした議論すらできていない状態。今が、議論を深める絶好のチャンス」と、訴えました。

上村圭介氏
  上村圭介氏

ドイツに関する昨年の調査では、分野別の個人識別番号があるが、統一的な個人識別番号を導入することは、憲法の壁があり困難であろうという見方でした。今回の上村圭介氏の調査報告では、「ドイツでは、カードの番号体系はセパレートしたままで、分野別の動きを整合していこうという動きがあり、2006年から導入された健康保険カード(eGK)に加え、官民が相互に利用できる電子本人確認証(ePA)の2010年導入が政府主導で進められている。」ということでした。

庄司昌彦氏
  庄司昌彦氏

一方、フランスは、個人情報に非常にセンシティブな国民性の中で、CVQのような日常生活カードをどのように普及させているのかを知ることは、大いに日本の参考になると考えたのですが、実際のところは、慎重論や反対論が多く、うまくいっているとはいえない状態であったとの調査報告が、庄司昌彦氏よりなされました。2007年に発足したサルコジ政権の「包括的ICT政策」の下で見直しが行われており、全国民に導入するeIDカードによる電子認証ツール普及、電子申請の完全オンライン化、公共サービスWebサイトの統一、医療カルテ共有と遠隔医療などのプロジェクトが開始されているということでした。

中島洋氏
  中島洋氏
松村寿弘氏
  松村寿弘氏
崎村夏彦氏
  崎村夏彦氏

休憩を挟んで、中島洋コーディネータのもと、パネルディスカッション「地域の安全・安心のための情報化のあり方」と続きました。中島洋氏は、国際大学GLOCOM教授ですが、社会経済生産性本部情報化推進国民会議特別委員会の委員長を務めており、電子行政の認証基盤を検討している中核メンバーでもあります。最初に、岩手県紫波町(しわちょう)生活部町民課町民窓口室主査の松村寿弘氏より「住基カードの活用」と題して紫波町の取り組みの事例紹介がありました。住基カードの提示により、温泉館の入浴料割引きをしたり、買い物にポイントを付与したり、とにかく、カードを持っていると得をするようなアイディアを導入し、1万枚発行、町内所持率を90%以上としたそうです。続いて、OpenIDファウンデーション・ジャパン発起人代表の崎村夏彦氏からは「OpenIDと官民連携の視点」と題して、ひとつのIDでいろいろなサイトにログインすることのできるようにする仕組みの話がありました。現在の活動状況に加えて、今後、官の発行する公的な電子証明を民が使えるようにするには、どうしたら良いかという視点では、必要な情報だけをフィルタリングして開示する機能をもったOpenIDサーバーをたてるということでした。官民連携は、上村氏によれば、ドイツで取り組みが始まっているそうですが、我々には、未だ大きな課題です。


  パネル風景

パネルディスカッションでは、利用者視点にたった電子政府や電子的な個人認証の仕組みの構築の必要性について、議論が行われました。住基カードの二の舞にならないためには、現在進められている社会保障カードと住民基本台帳システムとの連携が必要であり、利用者にとって本当に使いやすい仕組みを検討していかなければならないということでした。また、自治体はチャレンジ精神を持って活用方法を考えるべきであり、そして、そこには官民連携といった側面も重要なことであることなどが、中島コーディネータの好リードのもと、議論されました。

なお、パネルディスカッションでの討議内容は、討議録「地域の安全・安心のための情報化のあり方」として掲載させていただきました。また、今回のシンポジウムで使われた発表資料は、ダウンロードが可能となっておりますので、ご利用下さい。

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