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公益財団法人 NEC C&C財団

 

2007年度C&C賞受賞者

Group B

伊賀健一博士

伊賀 健一 博士
Dr. Kenichi Iga
東京工業大学 学長
President, Tokyo Institute of Technology



業績記

「面発光レーザの発明とその実現による光エレクトロニクス発展への貢献」

業績記補足

伊賀健一博士は、1977年に東京工業大学において、半導体基板面に対して垂直に光が出る全く新しい構造の面発光レーザ(VCSEL: Vertical Cavity Surface Emitting Laser)を発明しました。それから2年後の1979年にパルスでのレーザ発振に成功したものの、それまでのレーザと比較して、原理的に活性層の長さが桁違いに短いためにレーザ発振条件が厳しく、実用化に必須となる室温での連続発振に至るには苦難の時期が長く続きました。
こうした状況下で伊賀博士らは反射膜構造や活性層構造の改善に向けたさまざまな取り組みを行いました。すなわちGaAs(ガリウム砒素)ベース、InP(インジウムリン)ベースのそれぞれの構成に対し、基板を除去した薄膜による短共振器構造、誘電体多層反射膜反射鏡、円形埋め込みメサ構造(CBH)、電流ブロック層など数十項目の改善を重ねました。そして遂に1988年、室温での連続発振に成功しました。この後、ベル研究所をはじめ複数の研究機関でも連続発振に成功し、世界中で低閾値化など実用化に向けた改良がなされ、製品化に至っています。面発光レーザは、一枚のウェハーから多くの素子が得られるだけでなく、ウェハーの段階で性能を検査できるため、低コスト化が可能です。また、低消費電力、単一周波数動作、超高速直接変調ができるなどの優れた特徴があるため、ギガビットイーサなどの短距離高速データ通信用の光源や、レーザプリンタや光学マウスなどにも広く使われています。さらに、スーパーコンピュータから携帯電話にいたるまでの光インターコネクト(光による配線や接続)などの用途も注目されています。当財団は、面発光レーザの提案と先導的研究により、光エレクトロニクスの新分野に端緒を切り拓いた伊賀健一博士の業績を、高く評価いたしました。