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公益財団法人 NEC C&C財団

 

2009年度C&C賞受賞者

Group B

ロナルド L. リベスト教授

ロナルド L. リベスト教授
Prof. Ronald L. Rivest

マサチューセッツ工科大学
アンドリュー&エルナ ビタービ電気工学・コンピュータ科学教授


アディ シャミア教授

アディ シャミア教授
Prof. Adi Shamir

ワイツマン科学研究所
(イスラエル)
ポール&マレーネ ボーマン応用数学教授


レオナルド M. エーデルマン教授

レオナルド M. エーデルマン教授
Prof. Leonard M. Adleman

南カリフォルニア大学
ヘンリー サルバトーレ コンピュータ科学教授ならびにコンピュータ科学・生物科学特別教授


業績記

「公開鍵暗号方式RSAアルゴリズムの発明」

業績記補足

Ronald L. Rivest、Adi Shamir、Leonard M. Adlemanの各博士は、1977年に、MIT(Massachusetts Institute of Technology)における研究を基に、素因数分解の計算複雑性に依拠する数論を用いて実装可能な「RSA暗号アルゴリズム」を発明しました。RSAは、発明者の頭文字から命名されたものです。「RSA暗号アルゴリズム」は、それまでの暗号方式の主流であった送信側と受信側で同一の鍵を用いる共通鍵暗号方式とは異なる公開鍵暗号方式を実現するためのアルゴリズムです。この公開鍵暗号方式では、一対の暗号用の鍵と復号用の鍵を生成し、 暗号用の鍵(公開鍵)を公開、復号用の鍵(秘密鍵)を秘密にします。そして、公開鍵で暗号化されたデータは、受信者だけが保持する秘密鍵によってのみ、元のデータ(平文)に復号することができるのです。

「RSA暗号アルゴリズム」では、数百桁に及ぶ巨大な数の素数の積を用いて公開鍵と秘密鍵を生成します。公開鍵を使って生成された暗号文からもとの文(平文)を得るには、公開された巨大な素数の積の素因数分解が必要となります。巨大数の素因数分解には現在の計算アルゴリズムでは膨大な計算処理が必要で、一定の桁数以上の巨大数では、現在のコンピュータを使って現実的な時間内に、元の二つの素数を割り出すことができないことから、秘密鍵なしに暗号文を解読することが不可能となっています。

「RSA暗号アルゴリズム」の発明までは、安全が保証されている通信路を使ってあらかじめ秘密鍵を交換しなければ暗号通信ができないという問題がありました。しかし、この「RSA暗号アルゴリズム」の発明によって、秘密鍵をあらかじめ交換する必要がなくなり、ネットワーク上の安全な通信が実現できる道が開かれたのです。

公開鍵暗号方式においては、情報の秘匿に加え、もう1つの特徴として電子署名(ディジタル署名とも呼ばれる)等で利用される「認証」が可能となります。すなわち送受信するデータを安全に相手に送り届けるだけでなく、そのデータの発信者が、間違いなく本人であることを証明する手法を提供することが可能となります。「認証」では、送信者が自分の秘密鍵で平文を暗号化して、相手に送ります。受信者は、その送信者が発行した公開鍵を使って復号化を行い、正しく復号化できれば、それが本人の秘密鍵で暗号化されたことが証明され、間違いなく本人が送信したものであると証明されるのです。公開鍵暗号方式を利用した認証機能に基づくインターネット上のPKI(Public Key Infrastructure)は、企業間における電子商取引や電子政府における電子申請だけでなく、文書の署名や電子メールにおけるユーザ認証などにも広く利用されています。

以上のように、Ronald L. Rivest、Adi Shamir、Leonard M. Adlemanの各博士による、素因数分解の計算複雑性に着目した公開鍵暗号方式よる「RSA暗号アルゴリズム」の発明と、その実社会への応用をはじめとした情報セキュリティ産業への貢献は極めて大きくC&C賞に相応しい業績と考えます。