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公益財団法人 NEC C&C財団

2010年度C&C賞・25周年記念賞表彰式典

ご挨拶する佐々木理事長
ご挨拶する佐々木理事長

平成22年11月24日(水)ANAインターコンチネンタルホテル東京にて2010年度NEC C&C財団の表彰式典を執り行いました。晴天に恵まれた爽やかな秋の日の午後、約120名の方々に、ご出席頂きました。

佐々木理事長による開会のご挨拶では、NEC C&C財団の紹介に加え、C&C賞の受賞者は今年で85名になったこと、今年の3月に財団設立25年を迎えたことから今年は25周年記念賞を設けたこと、公益法人への移行認定を受けることができたことなどが述べられました。式次第に従い、次に末松安晴審査委員長による受賞者の選考経緯と受賞者発表がありました。C&C賞については、グループAの受賞者として、「量子細線・量子ドット半導体デバイスに関する先駆的・先導的貢献」に対し榊裕之・荒川泰彦博士に、また、グループBの受賞者として、「Linuxカーネルの開発とオープンな基本ソフトウェア開発モデルの提唱」に対しLinus Torvalds博士に佐々木理事長より表彰状、C&C賞牌と賞金とが贈られました。また、NEC C&C財団25周年記念賞には、「地球圏外天体への離着陸と地球帰還を世界で初めて実現した“はやぶさ”の通信・制御を核とする総合システム技術の開発」に対して、上杉邦憲・川口淳一郎博士に記念盾と賞金とが贈られました。

続いてご来賓の経済産業省商務情報政策局長の石黒憲彦様からは、受賞者へのお祝いと、産業の高度化と成長には世界最先端のIT技術が必須であることが述べられました。電子情報通信学会長の津田俊隆様からは、ICTの業界を元気付けるデバイス、才能のある若いエンジニアに活躍できる場を提供しているリナックス、若い人たちに大きな夢を与えたはやぶさの3つの業績は、若い人達やIT関係者を勇気づけるものであるとのご祝辞を頂き、贈呈式は滞りなく終了しました。

榊博士・荒川博士
榊博士・荒川博士
Torvalds博士
Torvalds博士
上杉博士
上杉博士
川口博士
川口博士

受賞講演では、榊裕之博士による「半導体ナノ薄膜・細線・ドット構造による電子の量子閉じ込めと先端素子応用の探索」、続いて荒川泰彦博士による「量子ドット研究30年」と題する受賞記念講演を頂きました。グループAの榊博士のご講演は東京大学で研究をはじめたいきさつから、量子閉じ込めの素子応用に展開していく研究過程を丁寧に話され、「菅野教授、江崎玲於奈博士そして共同受賞者の荒川博士に引き合わせてくれたことが、これら一連の研究を成功させてくれた」との感謝の想いも述べられました。荒川泰彦博士のご講演は、レーザの歴史からはじまりました。1982年に理論計算で提案した量子ドットレーザは、このレーザの歴史の中でも大きな革新技術であり、製品としても出荷が始まっていること、そして、量子ドットの研究は極限半導体レーザともいえる単一人工原子レーザの実現につながったと話されました。さらに、「今後は、通信用量子ドットレーザ、民生用量子ドットレーザ、未来量子ドットレーザの3つの分野で産学連携を軸とした研究開発の展望に大きな期待が込められ、「Intel inside」に対して、量子ドットレーザの「QDL Inside」の世界にしたい」と結ばれました。

続いて、グループBの受賞者であるトーバルス博士は、自らの少年時代の話からはじまりました。「子供の頃は、数学者か科学者になりたいと思っていました。祖父の影響と思いますが、ガウスやニュートンを英雄視して、いつか彼らのような科学者になりノーベル賞をとりたいと思っていました」「しかし、数学者である祖父がコンピュータの面白さに気づかせてくれ、大学の時には科学者になるよりもプログラミングしているほうがハッピーに感じるようになったのです」とプログラミングの世界に興味をもったいきさつを話してくれました。「リナックスカーネルの開発については、自分単独としては、最初の6ヶ月から10ヶ月しか開発しておらず、何千人、何万人のエンジニア、またその他の多くの人達のお陰で開発できたものであります。」そして、「オープンソースというのはプロダクトをシェアして皆で問題を解決できるということであります。」と述べられました。今は、自分の大半の時間は、そのオープンソースの開発プロセス、即ち、「世界に分散している組織や技術者の境界を越えてコミュニケーションするためのツールの開発」に向けられているとのことです。また、「フィンランドは小さい国ですが、優れた教育を受けられるインフラが整っています。そのお陰で、今の自分があります。」そして「リナックスを支えているのは、オープンソースのコミュニティにあり、開発している人達にも、思いもかけない使い方を考えてくれる人達にも、そして、それらを支えてくれている世界の多くの人達にも感謝している」と、受賞の喜びと感謝の気持ちが述べられました。

25周年記念賞を受賞された上杉邦憲博士川口淳一郎博士のお二人の講演は、本日の記念賞の授賞が非常によいタイミングであると感じさせられました。「はやぶさ」の使命であった人類初のサンプルリターンは、この財団の設立の1985年に構想が組まれたそうですし、本日の式典の数日前に「はやぶさ」の持ち帰った砂粒は小惑星イトカワからのものであったというビッグニュースで紙面を賑わしていたからです。川口博士は、「砂粒の発表をこの式典のタイミングにあわせたのです」と冗談を言われていました。上杉博士の説明にあった「はやぶさ」計画のミッション達成度は100点満点の評価法で500点をマークする偉業を成し遂げており、そのような成果をもたらしたのは、「はやぶさが「自立性」を有していたからであり、ComputerとCommunicationの力を抜きにはできない」と述べられました。そして「運を実力に変え定着させる持続的な活動」を行えたからであり、今後とも「技術を若手に伝承し層を厚くしていくことと、ハイリスクでも持続的な投資を行うこと」が、今後の発展に重要であると、お二人のご講演を締めくくられました。

受賞講演の後、式典の参加者が受賞者にお祝いの言葉を述べ、また参加者同士が懇親を深めるカクテルパーティの場が設けられました。受賞者を囲んでの写真撮影や歓談などは、30分と短い時間ではありましたが、参加者には好評でした。

会場を移しての晩餐会では、佐々木理事長会長の挨拶に続き、ご来賓の情報処理学会会長の白鳥則郎様より乾杯とご祝辞を頂きました。「今回の賞は量子の世界から宇宙に至るまでの分野で青少年に対して夢を与え育むものであり、情報処理学会も子供達や若者に対して、夢と希望を与えられるような企画をしている」とお祝いを述べられました。

最後に、受賞者のお客様を代表して江崎玲於奈様、Linux FoundationのZemlin様、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の根本義久様よりお祝いの言葉を頂きました。ニューヨークから昨日帰ったばかりの江崎玲於奈様は「予想できないようなサイエンスの将来をどう予想するか」は面白いテーマ、「サイエンスに比べると技術のほうが予想しやすい」ものと思うが、「お二人は予想できないような成果をあげられた」と受賞者にお祝いの言葉が述べられました。Zemlin様は、流暢な日本語で「世の中には2つのOSがあります。莫大な富を得ているOSの代わりに、リーナスは他と共有できるというOSを残しました。」そして、英語では「リーナスはインテリジェンスを共有できるものを生み出しました。国境を越え、組織を越え、IBMもオラクルもHPも富士通もNECもひとつになってクリエイティブなものを生み出すことができるものをつくりました」とおTorvalds博士に祝いの言葉が述べられました。根本義久様は、当時、文部省で、はやぶさの計画を承認する立場にあった思い出から、「はやぶさは<<激>>というのがぴったりあてはまる、リスキーであっても挑戦してみること、情熱の大切さを教えられた」とお祝いを述べられました。続いて受賞者の感謝のスピーチがあり、晩餐会は拍手のうちに閉会となりました。

表彰式典の様子
式典会場の様子 式典会場の様子
 
 
選考経緯を説明する末松審査委員長 選考経緯を説明する
末松審査委員長
 
経産省商務情報政策局長石黒憲彦様のご祝辞 ご来賓祝辞を頂いた
経産省商務情報政策局長
石黒憲彦様のご祝辞
ご来賓祝辞を頂いた電子情報通信学会津田俊隆会長ご来賓祝辞を頂いた電子情報通信学会津田俊隆会長 C&C賞受賞講演をされた榊裕之博士
C&C賞受賞講演をされた
榊裕之博士
C&C賞受賞講演をされた荒川泰彦教授
C&C賞受賞講演をされた
荒川泰彦教授
C&C賞受賞講演をされたTorvalds博士
C&C賞受賞講演をされたTorvalds博士
記念賞受賞講演をされた上杉邦彦博士
記念賞受賞講演をされた
上杉邦彦博士
記念賞受賞講演をされた川口淳一郎博士
記念賞受賞講演をされた
川口淳一郎博士
カクテルの場
カクテルの場
カクテルの場
カクテルの場
カクテルの場
カクテルの場
晩餐会会場の様子 晩餐会会場の様子
 
情報処理学会長白鳥則郎様によるご祝辞と乾杯 情報処理学会長白鳥則郎様によるご祝辞と乾杯 江崎玲於奈様 江崎玲於奈様
 
Jim Zemlin様
Jim Zemlin様
根本義久様
根本義久様