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公益財団法人 NEC C&C財団

 

NEC C&C財団25周年記念賞

1985年に設立されたNEC C&C財団は2010年3月に設立25周年を迎えたことから、これを記念して幾多の試練を乗り越えて偉業を達成した小惑星探査機『はやぶさ』の技術開発に顕著な活躍をされた2名にNEC C&C財団25周年記念賞を贈呈しました。
本賞の表彰は2010年度のC&C賞表彰式典にて行なわれ、受賞者には賞牌ならびに賞金(各々50万円)が贈られました。  

受賞者

上杉 邦憲博士

上杉 邦憲 博士
Dr. Kuninori Uesugi
宇宙航空研究開発機構 名誉教授

 
 
 
 
 
>川口 淳一郎博士

川口 淳一郎 博士
Dr. Jun'ichiro Kawaguchi
宇宙航空研究開発機構
宇宙科学研究所 宇宙航空システム研究系 教授 研究主幹
月・惑星探査プログラムグループ プログラムディレクター
”はやぶさ”プロジェクトマネージャー


業績記

「地球圏外天体への離着陸と地球帰還を世界で初めて実現した『はやぶさ』の通信・制御を核とする総合システム技術の開発」

業績記補足

小惑星探査機『はやぶさ』は、2003年の5月にM-Vロケット5号機によって打ち上げられ、2005年9月に小惑星イトカワの軌道に到達し、ランデブー飛行(目標物と同一の軌道で飛行)の後にイトカワに着陸し試料採取に挑み、打ち上げ7年間後の2010年6月に地球に帰還しました。『はやぶさ』は世界で初めて地球圏外の天体に着陸して往復の惑星間飛行に成功した探査機です。また、小惑星から試料を採取し地球に持ち帰るサンプルリターンに挑戦した世界で初めての探査機でもあります。『はやぶさ』とそのミッションに利用された要素技術は、通信・制御を核とする総合システム技術のひとつの頂点であり、世界の宇宙開発の進展に大きく貢献したものといえます。

上杉邦憲博士は、『はやぶさ』プロジェクトの実現に至る日本の宇宙探査技術の研究開発と構築に大きく貢献し著しい実績をあげました。特に、日本初の惑星探査機の誕生から今回の『はやぶさ』の成功に至る一連の開発の中で、(1)我が国で初めて地球引力圏を脱出し、惑星間航行技術を取得した『さきがけ』『すいせい』を成功に導き、(2)『ひてん』によりダブル・ルナー・スイングバイ(月の引力を利用して探査機の方向を転換)による軌道制御技術を実証した後、月周回および月面到達を実現させ、 ( 3)『はやぶさ』コンセプトの先駆けとなる彗星の核のサンプルリターンミッション(SOCCER計画)を世界に先駆けて提唱し、(4)『はやぶさ』の実現に向けて礎を築き、プロジェクト・エクゼクティブとして『はやぶさ』の開発・打ち上げ・運用を成功に導きました。

川口淳一郎博士は『はやぶさ』の構想立案と世界への提案を行い、プロジェクトマネージャとして、『はやぶさ』実現のための要素技術の開発からマネージメントに至るまで、すべての面でプロジェクトの中心的役割を果しました。特に『はやぶさ』の開発・打ち上げから帰還・回収の成功に至る一連の開発の中で、(1)軌道制御手法としてイオンエンジンによる軌道エネルギーの蓄積と地球スイングバイ(地球の引力を利用して探査機の方向を転換)を合わせたEDVEGA法(Electric Delta-V Earth Gravity Assist)を編み出し、新たなターゲットとして小惑星1998SF36(後に『イトカワ』と命名)への軌道計画を考案し、(2)光学航法や自律航法に関する開発を主導し、小惑星イトカワへの離着陸を成功させました。また、(3)度重なる探査機のトラブルの中で、次のリカバリステップまでの周到な考察と運用現場で論理的な瞬時判断を行い、幾度もプロジェクトの窮地を脱した手腕も『はやぶさ』を成功に導いた特筆すべき貢献でした。

世界に例を見ない、地球圏外天体からのサンプルリターンに挑んだ『はやぶさ』ミッションの実現、窮地からの脱出、帰還の成功は、上杉邦憲、川口淳一郎両博士の宇宙探査技術開発における多岐にわたる経験や知見に基づく指導と推進によるところが多大であり、NEC C&C財団25周年記念賞に相応しい業績であると評価します。