2016年度C&C賞受賞者

2016年度C&C賞受賞者が決定しました。
受賞者は次の2グループ2名の方々です。
>> プレスリリース
グループA
>> グループA 業績詳細
![]() 大野 英男 教授 東北大学 電気通信研究所 教授 |
業績記
スピントロニクス技術に関する先駆的・先導的研究への貢献
受賞理由
大規模半導体集積回路は、情報処理システムや、あらゆる産業製品の基盤として、社会の進化や発展を支えています。一方で、ビッグデータやIoTといった情報量の拡大や処理の高度化ともあいまって、多大なエネルギー消費を招いており、半導体集積回路や構成素子には高機能性と省エネルギー性との高度な融合が強く求められます。
大野教授は、そのような社会の発展や要求の高まりに先立ち、磁性体のもつ電子スピンをエレクトロニクス技術に活用し、革新的な高機能素子の実現を目指すスピントロニクス技術を提案・創生してきました。
また、その優れた省エネルギー性に着目した応用研究を推進し、新たな研究領域の潮流を切り拓いてきました。特に世界初の強磁性Ⅲ-Ⅴ族化合物半導体の結晶成長実現を始め、化合物半導体における強磁性発現のモデルの構築、外部電界による強磁性と常磁性間の相転移制御、強磁性半導体による多種多様な新素子の提案と実証などの一連の活動により、多くの世界中の研究者を引き付け、スピントロニクス技術に関わる研究分野の開拓と発展を先導してきました。
さらに、教授は、スピントロニクス素子や回路などに関わる設備インフラの構築や、国際研究拠点の整備などの研究開発体制の確立や同領域の人材育成にも尽力してきました。省エネルギー化が求められる論理集積回路などの産業応用への研究成果の展開を推進するなど、学術面のみならず産業面での貢献も顕著であり、C&C社会を持続的に支え続けるための高機能・省エネルギー半導体の基礎となるスピントロニクス技術創生の先駆者として、C&C賞に相応しい業績と考えます。
グループB
>> グループB 業績詳細
![]() ジェフリー E. ヒントン 教授 トロント大学 名誉教授 |
業績記
ニューラルネットワーク領域における研究ならびにディープラーニング技術の先駆的開発に関わる卓越した貢献
受賞理由
人工知能は、効率的で高度なサービスの提供や複雑化する社会課題の解決に必須となる基盤技術であり、今後、あらゆる産業分野を通じて社会の活性化につながる大きな可能性を持った技術に発展するものと考えられます。現在、人工知能の大きな研究ブームが到来していますが、強力なディープラーニングのアルゴリズムと、ビッグデータ処理技術の進歩、コンピュータ処理性能の飛躍的な向上により、人工知能がこれまで不可能だった課題に対応できる段階となり、その本格的な普及期の入り口に立ったとも言えます。
ヒントン教授は、人工知能の重要な技術である、ニューラルネットワークの技術の確立に貢献した第一人者であり、ボルツマンマシンや誤差逆伝搬法など、ニューラルネットワークの基盤となる技術の開発に大きく貢献しています。2006年には、多層化したニューラルネットワークにおける効果的な学習方式を発表し、音声認識で劇的な性能向上を実現するとともに、2012年の世界的な画像認識のコンペティションにおいては、ニューラルネットワークを大規模に多層化したディープラーニングにより驚異的な性能向上を実証し、世の研究者に衝撃を与えました。
教授が開発したディープラーニングは、機械学習分野のブレークスルーとなり、機械学習技術の産業分野への実用化を加速し、現在の人工知能の発展の牽引役ともなっています。その先駆的・主導的な取り組みは、情報通信技術のみならず社会経済や産業の発展において多大な貢献を果たすものであり、C&C賞に相応しい業績と考えます。