2026年度C&C賞受賞者
2026年度C&C賞受賞者が決定しました。
受賞者は次の2グループの計4名の方々です。
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グループA
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香取 秀俊 博士 東京大学大学院 工学系研究科 物理工学専攻 教授 |
業績記
光格子時計実現への貢献
受賞理由
精密な時間計測は、情報通信ネットワーク、全球測位衛星システム、電子取引、科学計測など、現代の情報通信技術(ICT)社会を支える基盤技術です。現在の「秒」は、セシウム133原子が吸収・放出するマイクロ波の周波数を基準としたセシウム原子時計によって定義されています。一方で、マイクロ波より約10万倍高い周波数をもつ原子の光学遷移を利用すれば、時間をより細かく分割できるため、時計の精度を大幅に向上できる可能性があります。こうした背景から光原子時計の研究開発が進められてきました。
香取秀俊博士は、レーザー光によって形成した光格子に多数の原子を捕獲し、原子固有の光学遷移の周波数を同時に観測する光格子時計の概念を提案し、それを実際に実現することで、従来の原子時計を大幅に上回る超高精度な時間標準を確立しました。さらに、その成果を一般相対性理論に基づき場所による重力ポテンシャルの違いによって生じる時計の進み方の差を光格子時計で検出し、高さや重力ポテンシャルの差を測定する相対論的測地学や、これを用いて地殻変動や火山活動などの時間的・空間的変化を監視する時空間センシングへ展開し、次世代情報通信、量子技術、精密測位などへの応用を切り拓きました。
香取博士の業績は、超高精度な光格子時計の原理提案と実証、光格子時計を用いた相対論的測地学および時空間センシングへの展開、さらに社会実装に向けた実用化にまで及びます。これは、精密な制御・測位・同期を支える情報通信技術に大きく貢献するものであり、高安定レーザー、フォトニクス、電子制御、真空・冷却技術などを高度に融合したC&C技術の実例と言えます。本業績は、C&C賞にふさわしい卓越した成果であると高く評価できます。
グループB
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アンドリューG.バルト マサチューセッツ大学 アマースト校 名誉教授 |
リチャードS.サットン アルバータ大学 教授 |
クリストファー J. ロンドン大学 ロイヤル・ホロウェイ校 教授 |
業績記
強化学習の概念およびアルゴリズムの確立
受賞理由
人工知能(AI)は、人間が行ってきた認識、判断、意思決定などの知的活動をコンピュータ上で実現する技術であり、生産性向上や新たなサービスの創出を通じて、社会、産業、人々の生活に大きな変革をもたらすことが期待されています。従来のAIにおける学習の主流は、正解ラベル付きの学習例を用いる教師あり学習でしたが、事前に正解が与えられない状況においても、外部環境との相互作用を通じて学習し、自律的な意思決定を行えるようにすることが重要な課題でした。アンドリューG.バルト博士、リチャードS.サットン博士、クリストファーJ.ワトキンス博士は、この課題に対し、学習主体であるエージェントが、環境との相互作用を通じて得られる報酬を手掛かりに試行錯誤しながら、長期的な累積報酬を最大化する方策を学習する機械学習手法である強化学習の概念的・数学的基礎を確立するとともに、正解をあらかじめ与えた学習データに依存せず、報酬を手掛かりに試行錯誤から方策を学習する、実用的かつ汎用性の高い強化学習アルゴリズムを創出し、現代AIの発展に多大な貢献を果たしました。
バルト博士、サットン博士、ワトキンス博士が築いた強化学習は、幅広い課題に適用可能な汎用的な意思決定技術として確立され、深層ニューラルネットワークとの融合によって深層強化学習へと発展しました。その応用範囲は、ゲームAI、通信ネットワーク制御、半導体設計、物流・エネルギー管理の最適化にまで広がっています。また、人間のフィードバックを利用した強化学習は、生成AIの応答品質を向上させ、人間の意図に沿った安全性・信頼性の高い応答の改善に貢献する技術となっています。さらに、フィジカルAIや次世代ロボット制御の行動学習を支える中核技術として、今後のAI社会の発展において極めて重要な役割を果たすことが期待されています。強化学習の主要な概念と数学的基礎を確立したバルト博士とサットン博士の業績、ならびにQ学習を考案して強化学習の実用化を大きく前進させたワトキンス博士の業績は、情報処理および知能情報技術の発展に多大な影響を与えてきたものであり、C&C賞にふさわしい卓越した功績であると言えます。

